人生3回目のガス欠危機|徳島へ青物遠征、釣れたのは真鯛と冷や汗だった話

船釣り

先に白状しておくと、今回の話に魚はほとんど出てこない。主役は、ガソリンだ。

実は、ガス欠の危機に陥るのは人生で3回目になる。1回目は若い頃。走行中にエンジンが止まったが、運良く下り坂で、惰性のままガソリンスタンドへ転がり込んだ。奇跡の生還だった。2回目もやはり若い頃で、こちらは完全にアウト。スタンドに電話して、店員さんに燃料を届けてもらった。

「さすがに、もうやらんやろ」——そう思っていた。思っていたのに、またやってしまった。今度は、徳島からの帰り道で。

徳島・阿南から、青物ジギングへ

3月22日。脂の乗ったサワラと、丸々と太ったメタボなブリ。その青物を狙って、徳島県阿南市から出る船に乗り込んだ。仲間も一緒の、気合いの入ったジギング遠征だ。

結論から言うと、本命は撃沈。サワラもブリも、最後までジグを食わせることはできなかった。釣れてくれたのは、食べごろサイズの真鯛と、小さなマハタが一匹。青物狙いとしては完全に不発。それでも、この真鯛は徳島で初めて釣った記念の一匹だ。家に持ち帰って刺身にしてみたら、これがなかなかどうして、旨かった。ボウズよりは、ずっとマシだ。

徳島・阿南沖のジギングで釣れた真鯛と小さなマハタ

……と、この時点ではまだ「ちょっと渋かったな」くらいの、のんびりした帰り支度だった。本当の試練は、ここから始まる。

現地で入れるはずが、うっかり高速へ

実は高知のガソリンは、四国の中で一番高い。だから県外へ遠征したときは、いつも現地で給油してから帰るようにしている。今回も、帰りに徳島で入れて帰るつもりだった。

ところが——魚を締めて、クーラーに積んで、道具を片付けて。遠征の疲れもあって、頭がぼんやりしていたんやろう。給油のことがすっぽり抜け落ちたまま、気づけば高速に乗ってしまっていた。乗っているのは、ヴォクシーのハイブリッド。

それでも、この時点ではまだ余裕があった。「まあ、80〜90kmくらいで大人しく燃費走行すりゃ、地元まで何とか持つやろ」。そう、すっかりたかをくくっていた。

高速は山ばかり、スタンドが無い

うーん、徳島道は結構長いのか、結構ガソリンが減る。これは帰り着くまでのガソリンは微妙だ。ガソリンを入れようとしたが——。

甘かった。高速というのは、基本ずっと山の中を走る。仮に下道へ降りたところで、日曜の夕方だ。営業しているスタンドなんて、まず期待できん。

こうなったら、高速のクソ高いガソリンスタンドで入れるしかない——と腹をくくった。くくったのに、その肝心のスタンドが、無い。走れど走れど現れない。どこかで見逃したか? 焦りだけが募っていく。

楽しかった会話が、耳に入らなくなる

さっきまで、連れと釣りの話で盛り上がっていた。それが、だんだん頭に入らなくなってくる。気の利いた相槌も打てなくなり、二人とも、じわじわと青ざめていくのが分かる。

流れているはずのオーディオの音も、映像も、もう何ひとつ頭に入ってこない。意識は、ただ一点——燃料計の針だけに、吸い寄せられていた。

高知はトンネル地獄、そして警告灯

そして高知に入ると、今度はトンネル地獄が待っている。高知の高速は、とにかくトンネルが多い。「もしこのトンネルの中でガス欠になったら……」想像するだけで、背筋が冷たくなる。

燃料計の針は、ついにE線を割り込んだ。そして——オレンジ色の給油警告灯が、ぽつんと灯った。

トンネル地獄の真っ只中、E線にかかったこのタイミングで、速度を60km/hまで落とした。高速道路の法定最低速度はたしか50km/h——もう法律で許されるギリギリの低速まで落として、這うように走っていたわけだ。後続車の方、ごめんなさい。クルーズコントロールも解除した。普段の高速はいつもクルーズコントロールで速度を一定にしてもらうのが楽ちんなんやが、これだと道路のアップダウンで勝手にアクセルが開いたりブレーキがかかったりして、燃費がいいとは言い難い。とにかくアクセルを一定に、浅く踏んでキープすることに切り替えた。

過去のガス欠経験から、「E線を割っても、針2個分くらいならまだ何とかなるはず」と、自分に言い聞かせる。半分は願掛けだ。ロードサービスに電話する準備も、頭をよぎった。そうなりゃ帰りは大幅に遅くなる。目当ての魚は釣れんわ、ガス欠でレッカーだわで、連れに本当に申し訳ない。

ハイブリッドと、燃費の格闘

高知の中心部に近づくと、ようやく下り坂が増えてきた。「ここで稼げる!」と、わずかな希望が湧く。気づいたら、80kmくらいは勝手に出ていた気がする。

下りでたまにニュートラルに入れてみたが、ヴォクシーのハイブリッドだと、Nにしても惰性で稼げる感じはイマイチ。むしろエンジンブレーキを効かせた方が、回生で充電できるかもしれん。とはいえ高速は速度域が高く、街乗りのように電気(EV)モードが活躍する場面もない。結局、どのシフトが一番燃料を食わんのか分からんまま、普通にDで走り続けた。

エアコンも消してみた。が、ハイブリッドはコンプレッサーがベルト式やないからか、軽自動車みたいにオンオフで体感できるような変化はない。おまけに、下り坂ではタンクの中でガソリンが片寄って、吸い込み口が空気を噛んでしまうんやないか——そんな新たな心配まで湧いてくる。

E線を割り込み、給油警告灯が点灯した車のメーター

南国インター、そして天国のスタンド

何とか南国インターまでたどり着き、下道へ降りた瞬間、ようやく少しホッとした。下りで回生が効いて、ハイブリッドのバッテリーは充電MAX。あとは電気モードも使えるし、街中ならスタンドもある。もう少しだ。

「右やろ?」

「いや、左にもスタンドあるし、ナビもそう言いゆう」

「……ああぁぁーーー!!! 看板消えちゅうぅぅぅ! ナビの嘘つき〜!」

閉まっているスタンドに、何度ぬか喜びさせられたことか。そして次に見えてきた、煌々と明かりの点いたスタンド。あれはもう、オアシスというか、天国のように見えた。

教訓:遠征で一番大事なのは、燃料かもしれん

釣り人というのは、ロッド、リール、ジグ、氷、クーラーボックス……こういう道具は、出発前に念入りにチェックする。なのに、意外と盲点なのが「燃料」だ。

釣りに行くタックルの準備は、それこそカツオの仕掛けまで何度でも確認する。それでも、たまに何か忘れ物がある。今回の盲点は、まさかのガソリンの残量だった。高速道路でのガス欠は、本当に危険だ。走行車線で止まれば、大事故にもなりかねない。笑い話で済んだから良かったものの、一歩間違えば洒落にならんかった。遠征の前後は、釣り道具と同じくらい真剣に、ガソリンの残量も確認したい。心の底から、そう痛感した一日だった。

青物は撃沈、車だけはなんとか無事に家まで帰り着いた——という、締まらないオチである。……ちなみに、やらかしの記録はこれが初めてやない。よかったら自己ベストの甘鯛を真空熟成で腐らせた話も、笑ってやってください。

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高知在住の50代。高知県内を中心に釣りや潮干狩りを楽しみ、時には隣県へも遠征。旬の釣りを満喫しながら、釣れた魚・採れた貝を使って適当に・簡単に・まったりと料理するのがモットー。

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