ライフジャケットは本当に開く。落水した人と同じ船に乗り合わせた話

船釣り
船の舳先。手すりが途切れているところ
落ちた場所はこの辺り。柵が途切れているところから海へ。

釣り歴は長いが、実際に落水した人と同じ船に乗り合わせたのは、この日が初めてだった。1月の根魚ジギング。今でも忘れられない出来事だ。

その日、自分は連れと船の一番後ろで釣りをしていた。落水した人は反対側のミヨシ(一番前)だったから、実際に落ちる瞬間は見ていない。

突然、「落ちた!」という声が聞こえた。

何事かと振り向くと、どうやら誰かが海へ落ちたらしく、船内が一気に騒がしくなった。近くの人がタモの柄を伸ばして救助し、幸いすぐに助かって、大事にはならなかった。

「あ、ほんまに開くがや」

船に上がってきた時、腰巻きタイプのライフジャケットはしっかり膨らんでいた。何度も遊漁船に乗ってきたが、実際に開いたライフジャケットを見るのは初めてだった。

「あ、ほんまに開くがや」

そんなことを思ったのを覚えている。当たり前なんだけどな。それでも、実際に見るのとはやっぱり違う。

さすが船長

落水した人は「大丈夫大丈夫、全然寒くないき」と言っていたが、まあそう言うよな。海水温の方が気温より高い時期だし、アドレナリンも出ていたはずだ。

でも船長はすぐ動いた。「早く服脱いで!」「これ着て!」と、自分の着替えを貸していた。今思えば低体温症を警戒していたんだろう。さすがやと思った。

聞きたかったけど聞けなかった

後ろへ来たその人に「大丈夫ですか?」と声を掛けると、「大丈夫大丈夫」と返ってきた。

本当は色々聞いてみたかった。どうやって落ちたのか、海の中はどんな感じだったのか、怖くなかったのか。でも聞けなかった。なんというか、聞いてはいけない気がした。助かったとはいえ、ついさっき海へ落ちた人だからな。

それでも釣りを続けた

着替えた後も、その人は釣りを続けた。しかも落ちたのは釣り開始序盤、まだまだ先は長い。

周りはみんな完全防寒装備の中、その人だけ船長から借りたラフな格好。腰には膨らんだままのライフジャケット。長靴は片方脱げて海へ消えたらしい。それでもミヨシへ戻って、最後まで竿を振り続けていた。今思い返しても、かなり印象的な光景だった。

落水するのは初心者だけじゃない

その日の釣果は、あまり覚えていない。写真も残していない。それだけ落水のインパクトが強かったんだろう。

ただ、一つ分かったことがある。落水するのは初心者だけじゃない、ということだ。その人は見た感じ、明らかにベテランアングラーだった。帽子を被り、偏光グラスを掛け、日に焼けた顔。いかにも釣り慣れている風だった。

それでも落ちる。年齢を重ねれば足腰は衰えるし、体幹も弱くなる。明日は我が身だと思った。

一番反省したのは自分だった

実はこの出来事の後、一番反省したのは自分だった。当時使っていたライフジャケットはかなり年季が入っていて、ガスボンベの期限もとっくに切れていた。それでも「まあ大丈夫やろ」と、どこかで思っていた。

でも、目の前でライフジャケットが膨らむのを見て、考えが変わった。

もし落ちたのが自分だったら。あれは本当に開いただろうか。そう思うと、急に不安になった。

結局その後、新しいライフジャケットを買った。

自分が選んだのは、肩掛けじゃなく腰巻きタイプの自動膨張式。動きの邪魔にならんき、結局これが一番ちゃんと着続けられる。値段で選ばず、ボンベの期限だけはこまめに見るようにしとる。腰巻き式の自動膨張ライフジャケットを見てみる(Amazon)

無事だったからこそ笑い話にできる

今でも連れと、あの日の話になることがある。でも笑い話にできるのは、無事だったからこそだ。

もしライフジャケットを着けていなかったら。もし救助が遅れていたら。結果は違っていたかもしれない。

あの日の出来事は、おそらく一生忘れないと思う。

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高知在住の50代。高知県内を中心に釣りや潮干狩りを楽しみ、時には隣県へも遠征。旬の釣りを満喫しながら、釣れた魚・採れた貝を使って適当に・簡単に・まったりと料理するのがモットー。

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