前編では、活きエサ集めに四苦八苦した話を書いた。指に針を刺され、仕掛けを替え、ようやく小型のムロアジをイケスにためたところまでだ。
今回はその続き。泳がせ本番と——正直、思い出すだけでうんざりする土砂降りの話だ。
幸先のいい滑り出し
ある程度エサがたまったところで、泳がせを開始する。針は、周りの人よりは強めの20号のタマン針。ハリスは24号に、強化チューブを巻いて仕立てた。根の大物とのやり取りを想定した、太めの仕掛けだ。
まず連れが、大きなウッカリカサゴを立て続けに2匹。いい滑り出しに見えた。
泳がせ序盤、正体不明の一匹
自分にも、序盤に当たりらしきものがあった。いるような、いないような、よく分からない引き。半信半疑のまま合わせを入れて巻き上げてみると——上がってきたのは、小さなウッカリカサゴだった。
本命には、まだ遠い。だが、この後の展開を思えば、これはまだ序の口に過ぎなかった。
土砂降り、そして避難
——ここから、雲行きが文字どおり怪しくなる。だんだんと空が暗くなり、ついには土砂降りである。風も強くなり、もはや釣りができる状態ではないところまで海が荒れてしまった。一時は、キャビンの中へ避難する。
「雨の予報は1ミリ2ミリくらいやったのに、変わりすぎやろ…」
こんな大雨の中で釣りをするのは、人生で初めてだった。

釣り再開してしばらくして、13時頃だったか。雨は少しずつマシになってきたものの、カッパを着ていても長靴もパンツも全身ビシャビシャで、もはや集中力もなくなっていた。ときどき、少し眠くなる。もともと自分は鼻炎持ちで、朝から調子が悪かったところに、この大雨だ。降られているあいだじゅう、くしゃみと鼻水が止まらない。
追い打ちのハプニング|電動リールが沈黙
回収のアナウンスが流れて、電動リールを巻こうとすると——巻けない。バッテリーの残量計は75%を表示しているのに、電動リールの液晶が消えている。
「え?接触?」。色々試してみるも変わらない。とりあえず、手で巻くしかなかった。ギア比が低いのか巻き自体は軽いが、とにかく多く巻かないといけない。
連れにコードの予備を借りてみたが、症状は変わらず。結局、船べりに付いているバッテリーの端子を使わせてもらうことにした。端子の錆を、フックを磨くヤスリで落として接続すると——リールに電源が入った。使える。
犯人は、バッテリーだったらしい。ヘマジュンのバッテリーは安いが、買って1年ほどで不具合が出たようだ。前回使って80%ほど残っていたから充電せずに持ってきたのだが、表示の残量と実際の残量が、狂っていたのだろうか。
バッテリー問題が解決したのはいいが、今度はポイントを移動しても、当たらない。
虚。虚。無の極地、とでも言えばいいのか。当たりは全くない修行の時間が続き、竿を握ったまま、ほとんど意識が飛びかけていた。
気づいたら、電動オン
当たった感触は、正直よく覚えていない。気がついたら、自分は竿をしゃくって、電動のスイッチをオンにしていた。さらに追い合わせを入れる。PE4号を巻いたシーボーグ400が、ウイーン!と音だけ鳴って、糸が巻けていない。魚が、それだけ突っ込んでいるのだ。
ここで主導権を渡して根に入られたら終わりだ。必死で巻く。ゴン!ゴン!ゴン!と、竿先を叩いて暴れる。——その手応えで、ようやく目が覚めた。
徐々に電動リールの巻き上げ力を落としながら、慎重に浮かせていく。「やっと、今年の泳がせで獲れそうや」。そう思いながら海面を見ると、茶色っぽい魚影がぬうっと見えた。その瞬間は、久々に感動した。
4キロ弱の、ヒレナガカンパチだった。
周りは、大物にことごとく手こずっていた
本当は10キロクラスを狙っていたから、サイズだけ見れば物足りないかもしれない。それでも、この日の渋さを思えば、じゅうぶんすぎる釣果だった。
実際、周りは大物に手こずりっぱなしだった。強烈な引きでハリスを切られたり、フックを曲げられてのフックアウト、泳がせていた餌が真っ二つに食いちぎられたり。大物の気配だけは、はっきりとあった。魚はいる。いるのだが、乗せて獲りきるところまでいけた人は少なかった。

14時、納竿
14時納竿。ほぼ小雨になり、港に帰りついた頃にはすっかり雨もやみ、空が明るくなり、釣り日和になっていた。

「泳がせの時は、こじゃんち降りよったに、帰る時に雨やんできてふざけちゅうにゃあ」
締め|三度目の正直
今年は泳がせ釣りで、坊主を二度食らっている。足摺岬沖でも、浦戸湾の太刀魚でも、本命は最後まで顔を見せてくれなかった。
その泳がせで、三度目にしてようやくヒレナガカンパチが釣れた。指には針の返しまで刺さり、バッテリーは沈黙し、全身ずぶ濡れ、くしゃみ鼻水も止まらん、意識も飛びかけた一日やったけど——三度目にして、ようやく報われた気がする。
持ち帰ったのは、ヒレナガカンパチとウッカリカサゴ、それに餌用に釣ったムロアジやセイメイ、ウマヅラハギに似た正体のよく分からないカワハギ系。そこそこ釣れていた鯖は、釣果が十分だったのもあって、もらってくれる人がいたのでほとんどあげた。カンパチはまだクーラーの中で、さばくのは明日だ。料理編は、また後日。


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