本当なら7月11日土曜の晩は、今年初のイカメタルのはずだった。ところが台風の影響で波が高く、船は中止。
12日の日曜、行こうと思えば行ける昼間の釣りもあった。ただ、釣りというのは種目が変わるたびに、だいたい2時間くらいは準備がかかる。イカメタルの支度をすっかり済ませたあとで、今更別の釣りの準備をやり直すのはめんどくさい。波も高くて揺れるだろうし、このところどんどん暑くなってきているし。
「ほんなら日曜は貝やな」
ちょうど12日は10時19分が干潮で、潮位はプラス19cm。がっつり引く日ではないが、チャンバラ貝なら充分狙える。というわけで、前回に続く、二度目のチャンバラ採りに行ってきた。
グーグルマップで“当たり”をつける
二度目の今回は、新規開拓がテーマだ。前回と同じ浜で同じように採るだけでは面白くない。そこで事前に、グーグルマップの航空写真で下調べをした。前回採れた浜の近くから順に、海の色とにらめっこしていく。浅い場所は淡い水色に、深い場所は濃い青に写るから、その色の境目を追えば、かけ上がりがどのあたりから始まっているか、遠浅がどこまで続いているかが、写真からある程度読める。前回の経験からいえば、チャンバラがおるのは遠浅の砂地。水色がベターッと広く伸びている浜ほど期待できるはずだ。そうやって目星をつけたのが、今回の新規ポイントだった。
9時半頃、まずはその新規ポイントに立った。ところが、歩いてみると話が違う。「あれ、思ったより浅場が続いちょらんな」。かけ上がりが早く、少し沖に出るとすぐ深くなる地形で、遠浅とは言いにくい。案の定、チャンバラの姿はどこにもない。代わりに目についたのは、大きめのニナ(巻貝)がちらほら。ニナはニナで悪くないが、本命はあくまでチャンバラだ。ここは早々に見切ることにした。
濡れても気にせん、今日は軽で
新規開拓が空振りに終わったので、思い切って場所を移すことにした。実は今日、ちょっとした仕込みをしてきていた。いつもは家族も乗るヴォクシーで出かけるが、磯や浜を歩き回った後はどうしても濡れるし砂まみれになる。シートを汚したくない一心で、動きたい場所でも遠慮してしまう——それが地味にもったいなかった。
それに、苦い思い出もある。まだ高知でもアサリが採れていた頃の話だ。アサリと海水を入れたクーラーボックスを、うっかり車の絨毯にぶちまけてしまったことがある。その場では拭いたつもりでも、後々じわじわと車が臭くなってきて、結局シート下の絨毯を車から剥いで丸洗いする羽目になった。ああいうことは、家族も乗る車ではできるだけ避けたいわけである。
そこで今日は、気兼ねなく汚せる古い軽を引っ張り出してきた。古い軽は気楽だ。狭い道や置き場所にも困らないし、少々木や草へ車を寄せても気にならない。初めての浜を探し回る新規開拓には、むしろこっちのほうが向いている。
座席には濡れても平気な防水のシートカバーをかけ、足元には深さのあるマットを敷いておく。なにしろチャンバラ採りは胸まで海に浸かる。ラッシュガードも海パンも、全身海水まみれだ。防水シートカバーだけでは、染みた海水がつたってシートや絨毯に落ちる恐れがある。だから座るところにはバスタオルも敷いて、海水を吸い込ませる作戦にした。
もうひとつの相棒が、真水を入れたポリタンクだ。釣りに潮干狩りに、海遊び全般で車に常備している。今回も車に乗る前に一回真水を被って塩を流し、簡単にだが服を絞ってから、バスタオルの上に座った。塩水まみれのまま乗るのと、真水で流してから乗るのとでは、あとあとの車の状態が全然違う。ウォータータンクはアウトドア用でも防災用でもかまわない。車にひとつ積んでおくと、海帰りに限らずなにかと使える。
ただし、それでも濡れた道具をそのまま放り込むのはリスキーだ。真水を被ったところで、海水が100%流せるわけではない。そこで車の後ろのシートを倒し、マチの深いラバーマットを敷いて道具置き場にした。濡れた磯タビや道具はそこへ。細かい小道具や、終わったあとの海パンなんかは、バケツや水がこぼれない入れ物にまとめて放り込む。
「これでどこでも気楽に動けるき」。乗る車を替えるだけで、フットワークがぐっと軽くなる。移動のたびに身構えなくて済むというのは、思った以上に効いた。
結局、前回の実績ポイントへ
あれこれ頭では別の候補も浮かんでいたが、結局ハンドルを切ったのは前回しっかり採れた実績ポイントだった。もし先客がいたら、また別の浜へ回るつもりでいた。潮の良い日はポイントが被ることもある。ところが着いてみると、浜には誰もいない。「お、貸し切りやん」。これはこれで期待がふくらむ。
——が、そう甘くはなかった。前回たっぷり採れたあたりに絞って探しても、今日はどうにも渋い。前回よりも数が出ない。ならばと範囲を広げ、腰を据えて、できるだけ広く、しつこく探し歩いた。それでも……いない。本当にいない。
いや、正確には、おることはおる。キビレだ。チヌみたいな、ヒレの黄色いやつ。箱ビン越しに悠々と泳いでいくのが見える。「案外警戒心ないんやな」。そういえば前回も、箱ビン越しにこいつを見かけた。貝を探している人間の気も知らないで、今日も呑気なものである。
二時間粘って、獲れたのは最初の三十分だけ
結局この日は2時間ほど粘った。だが振り返ってみれば、貝がまともに採れていたのは最初の30分ほどだった。残りの時間はずっと、「この辺ならおるろう」と当たりをつけては外れ、また移動しては外れの繰り返し。同じ浜でも、少し場所がずれるだけで全くいなくなる。前回たっぷり採れた場所でこれだから、貝というのは毎回同じところで待っていてくれるわけではないらしい。
採った貝は、紐を手首に通した網に入れて持ち歩いた。

本当はこの網、浮き輪の真ん中に取り付ける予定だった。昔アサリを採っていた頃は、砂浜を掘るのではなく、海水にどっぷり浸かって鋤簾(じょれん)で採り、浮き輪に取り付けた網へ放り込んでいく方式だった。今回もそれでいくつもりが、イカメタル中止からの急な予定変更で準備の時間がなく、浮き輪は間に合わなかった。というわけで、前回同様、今回も手首ぶら下げ方式である。ただこれ、貝を入れるたびに網の口を開けてやらないといけない。ちょっとしたことだが、数を入れていくと地味に時間のロスになる。次こそは浮き輪を仕込んでいきたい。

それでも、ゼロではない。数こそ前回に及ばなかったが、型は良かった。手のひらに載せるとずっしりくる、結構デカいのも混ざっていた。

今回の本番は、ここからだ
さて、実は今回の隠れたテーマは、採ることではない。砂抜きだ。前回は替えの海水を汲まずに帰り、採ったその日に食べて、半分砂入りという苦い思いをした。今回は同じ轍は踏まないよう、現地で貝を相当洗い込み、帰り用の替え海水もしっかり汲んで帰った。
砂抜きリベンジの顛末は、実食編で。

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