チャンバラ貝採りの相棒は親父の手作り|箱メガネ(箱ビン)と特製マジックハンド

磯採り

先日、人生初のチャンバラ貝採りに行った話を書いた。その記事でも少し触れたが、今回はあのとき使った「道具」の話をしたい。というのも、使った2つの道具がどちらも親父の完全な手作りで、聞けば聞くほど面白かったからだ。

チャンバラ貝採りの道具 箱ビンと自作マジックハンド
今回の主役、親父特製の2つの相棒。右が箱ビン、左がマジックハンド

道具その1:箱ビン(高知の方言らしい)

水中をのぞくための道具を、全国的には箱メガネとか覗き箱と呼ぶらしい。ところが高知では、昔からこれを「箱ビン」と呼ぶ。最初はうちの家だけの呼び方かと思っていたが、どうやら県内では箱ビンで普通に通じるようだ。鮎漁が盛んな土地ならではの、ご当地の呼び名というわけだ。

そして、この箱ビンも親父の完全手作りである。割れないように分厚めのガラスをカットし、それをブリキで巻いて箱にする。顔が当たる縁と手をかける部分には、ウェットスーツの素材でクッションまで付けてある。芸が細かい。

菱形をした手作りの箱ビン 底に分厚いガラス
よく見ると四角ではなく菱形。底に分厚いガラスがはまっている

面白いのが、その形だ。箱ビンというと普通は四角を思い浮かべるが、うちのはご覧のとおり菱形(ひし形)をしている。なんでこんな形なのか聞いたら、答えは「川で流されんため」だった。川下から川上を向いて覗くぶんにはそう変わらないが、急流で横から覗くとき、四角いと水の抵抗をモロに受けてしまう。菱形だと当たった水を横や上へ受け流してくれるので、流れの中でも保持しやすい——。ただの箱に見えて、ちゃんと意味があった。

ブリキの接合は一辺だけ。そこからこの変則的な立体になるよう設計してカットしたわけで、想像するだけで難儀な作業だ。レンズに樹脂(アクリル)を使わないのにも理由がある。アクリルは傷がついてすぐ見えにくくなるが、ガラスならその心配がない。実際、市販のガラス製の箱ビンは割れてしまったらしく、結局この自作品が一番長持ちしているそうだ。

箱ビンの顔が当たる縁に付けたウェットスーツ素材のクッション
顔が当たる縁にはウェットスーツ素材のクッション。長く覗いても痛くない

この箱ビン、実は3個まとめて作ったらしい。そして子供の頃、自分はこれを使って、よく親父と一緒に鮎を獲っていた。子供用のウェットスーツまで買ってもらって、棒しゃくりやポン掛けで、鏡川や仁淀川、四万十川の上流まで通ったものだ。子供だったから遊漁券もいらなかった。川へ降りる山の斜面は、下りはまだいいが、帰りの上りが本当にしんどかったのを今でも覚えている。そんな道具を、何十年も経った今、海のチャンバラ貝採りに引っ張り出してきたわけだ。

あらためて「ようこんなん作ったね?」と聞いたら、親父はこう言った。

「ガラスを角にカットするがは大した事ないけど、丸に作るのは無理やにゃー」

なるほど。四角や菱形なら直線でカットできるが、丸はそうはいかない。だからこその、この形なのだ。

ちなみに、川の急流ならこういう菱形が効くが、流れのない海でチャンバラ貝(マガキガイ)を採るぶんには、市販の丸型の箱メガネで十分だと思う。これから磯遊びを始める人は、まず手軽なものを一つ持っておくといい。

(市販の箱メガネはこのあたり → Amazonで「箱メガネ・のぞき箱」を見る

道具その2:親父特製マジックハンド

親父特製の自作マジックハンド 全体
親父お手製のマジックハンド。アルミの筒の先に自作の爪、手元はロープの輪付き。全長1m超の年季モノ

もう一つの相棒が、親父お手製の「マジックハンド」だ。市販品かと思いきや、これも完全な自作。アルミの筒とステンのステーを組み合わせ、リベットと鉛のろう付けで仕上げてある。高枝切りバサミをヒントにしたらしく、握りを引くと先端が閉じて物を掴める仕組みだ。

マジックハンドの先端 ステンをリベットで留めた自作の爪
先端の爪。ステンをリベットで留めた自作機構。掴む先には滑り止めのゴム(自転車のチューブ)を巻いてある。元は画鋲+フェルトだったとか

面白いのが、そもそもの用途である。元々これは、夜、てんま船(伝馬船)で堤防に寄せて、壁をよじ登ってくるカニを獲るために作ったものらしい。カニは昼間より夜のほうが捕まえやすいそうで、揺れる船の上から手を伸ばして挟むには、確かにちょうどいい道具だ。必要なものは自分で作る——親父の発想力には、いつも感心させられる。

先端の作りにも歴史がある。カニを獲っていた頃は、画鋲を刺してフェルトを巻いてあったそうだ。よく考えたら、滑りを抑えるフェルトに、しっかり食いつく画鋲——これは磯ブーツ(フェルトスパイク)とまったく同じ発想で、なんだか感心してしまった。親父が船遊びを引退して、カニ採りもやめてからは、掴む先端に自転車のチューブのゴムを巻いて、今度は陸で第二の人生。高いところの果物やら、手の届かない何やらを掴むのに重宝していたらしい。一本でなんでもこなす、万能の自作道具である。

そんな年季の入った相棒を、今回チャンバラ採りに貸してくれた。

「チャンバラ取りに行くがやったら、これ使ってみいや」

使ってみると、これがよく効いた。チャンバラ貝は砂泥地にいるので、素手で拾おうとすると海中に潜らないといけない。でもこのマジックハンドなら、浸かったまま見つけた貝をヒョイと挟んで網へ放り込める。腰をかがめる回数が段違いに減るし、先端のおかげで貝の殻も傷つかない。さすが親父、と唸るしかなかった。それに、カニは採り損なうと逃げてしまうが、貝は失敗してもその場にいる。同じ道具でも、貝採りはずいぶん気楽なものだ。

ちなみに、自分で揃えるなら市販のマジックハンド(リーチャー)でも十分使える(Amazonで「マジックハンド・リーチャー」を見る)。ただし、買ったままだと貝がツルッと滑ることがある。親父のように、先端へ自転車チューブのゴムを少し巻くなど、滑り止めの一工夫をしてやると、グッと採りやすくなるはずだ。

道具に宿る、年季と工夫

あらためて2つの道具を眺めると、どちらも「必要だから自分で作る」という、親父の世代らしい発想で出来ている。買えば早いものを、ありあわせの材料と工夫で、何十年も使えるものに仕上げてしまう。チャンバラ採りでベテランの常連さんの道具を見て「年季が違う」と感じたものだが、考えてみればうちにも、とんでもない年季モノがあったわけだ。

ちなみに親父は、船遊びこそ引退したが、今も危なくない範囲で潮干狩りには出ているらしい。血は争えん、ということか。

道具を借りて、その由来を聞いて、なんだか採り方そのものより面白い話になってしまった。次に磯へ出るときも、この相棒たちと一緒だ。大事に使わせてもらおうと思う。

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この記事を書いた人
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高知在住の50代。高知県内を中心に釣りや潮干狩りを楽しみ、時には隣県へも遠征。旬の釣りを満喫しながら、釣れた魚・採れた貝を使って適当に・簡単に・まったりと料理するのがモットー。

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