イカメタル5杯で惨敗|潮が速すぎた夜に、打てる手を全部打った

イカメタル

前の晩に「さて明日はイカメタル」と書いた、その結果である。先に言ってしまうと、5杯。惨敗だ。ただしこれは、自分ひとりが下手を打った夜ではなかった。前日から、聞こえてくる船はどこも一桁ばかり。そういう海だった。

ポイントへ向かう船から見た日没の海
ポイントへ走る船から。この時間だけは、釣果に関係なく毎回得をした気分になる。

前日は、聞く船すべてが一桁だった

7月24日。自分は乗っていないが、この日のイカメタルはどの船も沈んだらしい。潮がとんでもなく速く、聞こえてくる船はすべて一桁ラッシュ。先週の40杯とは打って変わって、渋い話ばかりが回ってきた。

そして自分が予約していたのは、その翌日の25日である。

「昨日釣れてないき、辞めてもええよ?」

25日も潮が結構速いらしく、船長自ら「今日はやめておいた方が良さそう」と言ってきた。結果、乗り合いの半数がキャンセルした。

この日の船はMAEBAR遊漁船だ。ここの船長がいい人で、土曜という一番の稼ぎ時なのに、はっきり客の側に立ってものを言う。

「昨日釣れてないき、辞めてもええよ?」

普通なら黙って出して、代金をもらえばいい場面だ。

数ヶ月前にも、こんなことがあった。レンタルボートでイサキを釣っていたら、ポイントの近くにMAEBAR遊漁船がいた。

釣りをしていると、先に人が入っているポイントの近くに入った時、あまりいい顔をされないことが多い。遠目にも分かるくらい、露骨に嫌そうな顔をする人だっている。だからこちらも気を遣う。

ところが、この船は逆だった。それまで一度も話したことがないのに、向こうから声を掛けてくれたのだ。

「こっちでイサキがよく釣れゆうき、もっと寄ってきいや」

しかも、切り上げる時にはこうまで言ってくれた。

「もうイサキ釣りは終わって別の釣りに行くき、餌いらんか?」

そう言って、余った餌を分けてくれた。そういう船長である。

それで自分たちはどうしたか。出してもらった。

悪天候で中止になるのは分かる。けれど、釣れるか釣れないかは行ってみないと分からない。昨日は良かったのに今日はダメ、というのは釣りでは日常茶飯事だ。ならばその逆——昨日ダメで、今日は良い——があってもおかしくないじゃないか。

「行ってみんと分からんきね」

そういう理屈である。結論から言えば、この日は理屈が外れた。

日が沈む前から、潮は速かった

暗くなるにつれて、周りにも船がぽつぽつと集まってきた。

船に搭載されたGARMINのトローリングモーター
この船にはGARMINが付いている。錨を降ろさなくても、その場に船を留めておけるやつだ。

便利な装備なのだが、これを起動した瞬間に分かってしまった。潮が速い。竿を出すと、それがもっとはっきりする。糸が横に近い角度で流されていく。回収してみると、仕掛けがフローティングルアーのように海面を引きずられて上がってきた。沈むはずの鉛が、水面を滑ってくるのだ。

潮が速く斜めに流されるイカメタルのライン
ラインがこの角度。潮の速い日の、いやな絵だ。

イカメタルは、狙った棚(タナ)にスッテを置いておく釣りだ。潮が速いと仕掛けが吹き上がって、そこに留まってくれない。船長が船のギアを入れたり抜いたりして、釣りができる状態に調整してくれる。GARMINは船の位置を止められても、水中の潮までは止められない。そこを人の腕で埋めてもらっていたわけだ。

その調整のおかげで、ちょっとだけ釣れた。

初めての沖漬けは、家にあった麺つゆで

釣れたので、前からやってみたかった沖漬けを試すことにした。船の上で、生きたイカをそのままタレに放り込む、あれである。

専用のタレも売っているが、あれが結構いい値段をする。そんなに中身は変わらんだろうと思い、家にあった濃縮2倍の麺つゆをタッパーに移して持ってきていた。当然、クーラーボックスの中で冷やしてある。

釣れたイカを入れると、ブシュー。

麺つゆで作った初めてのイカの沖漬け
家にあった濃縮2倍の麺つゆで、初の沖漬け。いい感じに染み込んでくれればいい。

この沖漬けは家に帰ってから食べた。麺つゆで足りるのか、専用のタレに勝てるのか——その話は料理編と同じく、また別の記事で書く。

しかし、アタリが増えていかない

ここから伸びなかった。伸びないどころか、アタリそのものがなくなって、「無」の時間が続いた。

アタリがなく静まったイカメタルの竿先
うんともすんとも言わない竿先。この絵がずっと続いた。

先週は後半にまくった。だから今日も後半に来るだろうと思っていたが、来ない。地合いが来ない。

厄介なのは、ベイトの反応はずっとあったことだ。25〜45mと70〜90mの2層に分かれて、上の層は魚探が真っ赤。餌はずっといる。それでいてイカが食わない。

もう一つ、妙なことがあった。イカメタルでは集魚灯を焚いていると、上から覗いてもベイトの群れが見えることが多い。ところがこの日は、それが全く見えなかった。たまにトビウオの子供や、ウミヘビのような細長いのが灯りの下を通るくらいのものだ。魚探はあんなに真っ赤なのに、水面には何も寄ってきていない。

「やばいにゃあ、このままやとツ抜けいかんぞ?」

先週あれだけ効いた赤黄が、この日はさっぱりだった。カラーをローテーションしても変わらない。前日に買ったばかりのドロッパーも当然入れた。フルピンクUV、それに店のライトで結構光っていたスーパーブルーグロー488。光る/光らないで差が出るかを試したかったのだが、どちらも無反応で終わった。オモリグに替えてもダメ。

この日は初めてエサ巻きスッテも試している。スッテに鶏のササミを巻きつけて、色や動きだけでなく匂いでも誘うという仕掛けだ。イカメタルはふだん餌を使わない釣りなので、こちらとしては奥の手のつもりだった。それも釣れなかった。

持ち込んだイカメタル用スッテとドロッパー
この日に投入したのがこれ。翌日、洗うためにザルにまとめたものだ。中央の黄緑に白く巻きついているのが、初挑戦のササミ。持ち込んだ道具は、この倍以上ある。

結局、当たったのは2つだけだった

これだけ手を替え品を替えて、5杯。内訳はこうだ。

当たりカラーの赤白メタルとディープレッドのドロッパー
上の赤白のメタルで3杯、下のディープレッドのドロッパーで2杯。この2つだけだった。

上の赤白のメタルで3杯。これがこの日の一番の当たりだった。しかも、ろくに使ったことのないやつで、メーカーもよく分からない。エギの形をしたメタルだ。周りの連れも赤白が良かったらしく、この日の正解は赤白だったのだと思う。カゴの中には自信を持って入れた色がいくつもあったのに、仕事をしたのは一番あてにしていなかったやつだった。

下のエンジ色——ディープレッド——のドロッパーで2杯。前日に新調したがまかつのスピードメタル エギドロッパーである。最近はシマシマばかり使っていたので、たまには単色も試そうと買ったやつだ。派手系が全滅した夜に、この地味な色だけが仕事をした。新調した4つのうち、当たったのはこれ1本きりだったが、それでも買った意味はあったことになる。

ヤケクソのサビキも空振り、そして5杯で終了

もうヤケクソである。サビキを取り出した。太刀魚てんや用の餌を釣っておこうという算段だ。こういう時のために、小さめのサビキを保険で持ってきていた。

「こんだけ真っ赤なベイトがおれば、鯖くらい適当に釣れるやろ」

甘かった。まったく釣れない。赤網は付けていないが、フォールと巻きを繰り返せば何か掛かるだろうと思っていたのに、いっさい掛からない。連れはワームを取り出してアジを狙ったが、これもダメだった。

「なんちゃあ釣れんぞ…」

別の連れは、もう座って半分後ろにもたれ、やる気のない格好で竿を持っていた。たまに思い出したように適当にしゃくるだけ。心が折れていた。目が死んでいた。連れの奥さんは、とうに竿を置いて休んでいた。

終了。自分は5杯。他の人もおそらく3〜5杯。惨敗である。

帰りがけの浦戸湾は、月が明るかった。満月ではないが、まあまあ明るい月だ。昔から満月は釣れないとよく聞く。

月明かりに照らされた夜の浦戸湾
敗北して帰る浦戸湾。月が明るい。

なぜ釣れなかったのか、整理してみる

帰ってから、思い当たることを並べてみた。

まず潮。これが主犯だと思う。24日も25日も、船を問わず一桁で終わっている。イカメタルは潮が速すぎると、メタルもドロッパーも吹き上がって、狙った棚に置いておけない。ラインがあの角度で流れていく絵が、そのまま答えになっている。

次に月。イカメタルは集魚灯でイカを寄せる釣りだ。空が明るければ、その灯りの効きは相対的に落ちる。「満月は釣れん」という昔からの言い伝えは、少なくとも灯り勝負の釣りでは筋が通っている気がする。

そしてベイトの謎。魚探はあれだけ真っ赤だったのに、サビキには何も乗らず、ササミを巻いたスッテにも見向きもされなかった。

引っかかるのは、集魚灯の下にベイトの群れが最後まで見えなかったことだ。いつもなら上から覗いても見える。イカメタルは、灯りでベイトを寄せ、それを追って浮いてくるイカを釣る釣りである。その一段目が成立していなければ、あとは何をどうやっても始まらない。魚探に映っていた反応は、深いところに留まったまま浮いてこなかったのだろう。潮が速くて灯りの下に留まれなかったのか、月が明るくて灯りの効きが薄まったのか。おそらくは、その両方だ。

そして、周りの船。途中で船長が知り合いの船に連絡を取ってくれたが、そちらも一桁の途中だった。ただし後から聞いたところでは、この日いちばん釣っていた船で、最大20杯くらいだったらしい。爆釣には程遠い数字だが、一桁が並んだ夜としては上等である。

自分たちが叩いていたのは水深100mあたり。その船は120mだったという。潮が速い日は、沖へ出るより丘寄りのほうがマシだ——というのが船長の読みだったのだと思う。潮が速すぎればイカも口を使わなくなる。理屈は通っている。

それなのに結果は、もう少し深いほうがマシだった。この矛盾が難しいところだ。どの水深を叩くかはその日その日の船長の判断で、こちらから指示できるものでもない。任せて乗っている以上、当たる日もあれば外れる日もある。

打つ手が悪かったわけではない。その夜の正解が、20mだけ下にあった。それだけの話である。

行ってみないと分からない、と思って出た。実際は行ってみても分からず、帰ってきて人に聞いて、ようやく少し分かった。釣りは難しい。次は潮の緩い日に当たってくれることを願っている。

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この記事を書いた人
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高知在住。高知県内を中心に釣りや潮干狩りを楽しみ、時には隣県へも遠征。旬の釣りを満喫しながら、釣れた魚・採れた貝を使って適当に・簡単に・まったりと料理するのがモットー。

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