普段、自分が食べる魚といえば、たいていは自分で釣ってきたものだ。先日は太刀魚のエサにもならなかった豆アジまで唐揚げにして食べたくらいだから、わざわざ切り身を買うことは少ない。そんな自分が、珍しく冷凍のベトナム産バサに手を出した。
先に結論を言っておく。味は、美味かった。それでも、もう二度と買わない。
ついに、冷凍室の魚が底をついた
事の始まりは、冷凍室だ。釣ってきた魚のストックが、ついに底をついた。釣り人の家の冷凍室から魚が消えるというのは、なかなか落ち着かないものである。
残っているのは、釣りエサばかり。中には、エサなのか食用なのか、もう分からない謎のパックもある。笑

そんな折、スーパーの鮮魚コーナーで見つけたのが、白身魚の切り身。ベトナム産の養殖バサだ。100gあたり107円、一枚300円もしない。しかも「骨とり」で、骨がないからブツ切りにするだけ。「骨もないし、楽やな」——実はこのバサ、前から見かけるたびに少し気になってはいた。魚の在庫が切れた今が、試すチャンスというわけだ。
下処理は、けっこう丁寧にやった
これでも、手は抜いていない。事前にネットで調べたら、バサは身に水分が多いらしいと出てきた。それならと、まず塩を振っては、キッチンペーパーで水気を取る。それを何度か繰り返して、できるだけ水を抜いてやった。
ここまでは、我ながら丁寧な仕事だったと思う。
炒めながら、嫌な予感がしていた
水気が取れたら、塩胡椒をして、片栗粉をまぶして炒める。そこにしめじとキャベツを加え、おろしニンニクと鶏ガラスープの素で味を入れる。仕上げにバターを落とし、最後に醤油をひとたらし。料理名は正直よく分からん。ムニエルなのか、炒め物なのか。まあ、要はバター醤油炒めだ。

ただ、炒めている最中から、嫌な予感はしていた。なかなか「焼けてきた」という感じがしないのだ。いつまで経っても身がずっと柔らかいままで、焼け具合がさっぱり分からない。釣ってきた魚なら、火が入れば身がキュッと締まってくるのだが、こいつにはそれがない。
見た目は完璧、味も完璧。なのに——

出来上がりは、この通り。我ながら、普通に美味そうだ。そして実際、味は美味かった。適当に勘で入れた調味料が、我ながら完璧な塩梅だったのだ。バサ自体も食感以外は特に癖がなく、味付けがそのまま素直に乗る。味だけなら、文句なしだった。
問題は、そのあとだ。食感である。
身が、ブヨブヨなのだ。歯応えが、ゼロ。例えるなら、脂身というか、ホルモンの丸腸のような。あるいは、味付けしていない中国産の養殖うなぎを、さらに柔らかくしたような。噛んでも噛んでも、魚らしい弾力がまるで返ってこない。
「なんか身がたっすいにゃあ」
たっすい——土佐弁で「しっかりしていない、頼りない」という意味だ。まさにそれだった。自分で釣ったいろんな魚を食べてきて、たまには買った魚も食べるが、間違いなく今までの人生で一番柔らかい魚だった。
あとで調べてみたら、バサというのは、ざっくり言うとナマズの仲間らしい。……なるほどね。妙に納得してしまった。
もう二度と買わん。……たぶん
あれだけ水を抜いて、味付けも完璧で、それでもこの食感なら、もう救いようがない。素材が素材だと、どうにもならないということだ。味は良かっただけに、惜しい。
一回干物にしてみたら、少しは身が締まるかもしれない。ほかの調理法なら、案外いける食べ方があるのかもしれない。そんなことを考えたりもする。
前から気になっていたバサを、ようやく試せたのは収穫だった。ただ——多分もう二度と買わんかな。
さて、冷凍室はまだ空のままだ。早いところ釣りに行って「本物」を補充したいところだが……次はスーパーの冷凍の赤身魚でも、試してみるか。

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