天下のがまかつなら、間違いないと思った
イカを持ち帰るなら、墨袋は船の上で抜いておきたい。釣れた分を全部抜くわけではないが、抜けるだけ抜いておくと家に帰ってからの処理が段違いに楽になる。
イカメタル自体は今年で4年目になる。今年は県外への遠征にも行った。ただ、墨抜きの道具を買ったのは2年前だ。釣具屋の棚にいくつか並んでいたフォーセップの中から、自分が選んだのはがまかつ ラグゼ イカ墨フォーセップ 22cm LE135だった。
仕掛けを作るときのフックは、がまかつを買うことが多い。よく刺さる。一流メーカーならではの安心感がある。
「天下のがまかつやき、これで墨が取れん訳がないろう」
訳の分からんメーカーの物とは違う。そう思ってレジに持って行った。
ところが、成功率は3割だった
使ってみると、これが取れない。
掴んだつもりが滑る。力を入れれば墨袋が破れて、イカが墨まみれになる。10杯やって、きれいに抜けるのは3杯あるかどうか。そんな調子だった。
YouTubeで覚えたコツは、間違っていなかった
やり方が悪いのだろうと思って、YouTubeを見た。
そこで覚えたのは、フォーセップの先ではなく根本を墨袋の下に押し付けて、肝を掴むようにして引く、という方法だ。墨袋そのものを掴もうとせず、周りの内臓ごと持っていく。
これは後になって知ったことだが、がまかつ自身が商品説明にまったく同じことを書いている。「墨袋を挟まずに、墨袋の周りの内臓をキャッチ」し、内臓ごと引き抜くのがポイント、と。
つまり自分のやり方は、メーカーの言うとおりだった。
そのイメージ通りに、何度も船に持って行った。それでも一向に上達しない。結構難しいもんだ、で片付けたまま、今年の途中まで使い続けた。
もしかして、道具が悪いのでは
2年近く使って上達しないとなると、さすがに別の疑いが湧いてくる。
「これ、道具が悪いがやないか?」
運悪くハズレ個体を引いたのかもしれない。そう思って、別のフォーセップを探し始めた。
4,000円の名品は、どこも欠品だった
ネットを見ると、墨抜きフォーセップは山ほどある。どれも似たような形で、正直まったく分からん。
その中で目を引いたのが、大吉丸の「究極の烏賊墨抜き器」だった。他が1,000〜2,000円で売っている中、4,000円くらいと高い。ただ、指をかけるところが変わっていて、つかみやすいという。しかもイカの墨抜きを実際にしていた船頭が開発したものらしい。
これは欲しい、と思った。が、どこも売り切れで欠品中。残念。
次の候補が、墨取物語だった
そこで見つけて買ったのが、ヴァンガード・ジャパンの「墨取物語 スミ抜きフォーセップ」だ。全長233mmのステンレス製で、4,290円。結局、大吉丸と同じくらいの値段のものを買うことになった。

選んだ理由は二つある。
一つは、形が大吉丸に似ていて、指をかけるところなどに手間がかかってそうだったこと。人差し指用の指掛け、親指と薬指用の大型フィンガーホール、それに小指用の指掛け。5本の指すべてで握り込めるようになっている。
もう一つは、デスフォールのエギを持っていたことだ。ヴァンガード・ジャパンはそのデスフォールのメーカーで、このフォーセップにもデスフォールの名前が入っている。訳の分からんメーカーより馴染みやすかった。
——結局、がまかつを選んだときと同じ理由で選んでいる。1本目は外して、2本目で当たった、というだけの話でもある。
それともう一つ、しょうもない理由がある。名前だ。
「墨取物語」を見て、大昔パチンコにあった「綱取物語」を思い出した。連チャンするフィーバー台で、朝一から並んだこともある。
道具の性能とは何の関係もない。ただ、妙に引っかかったのは確かだ。
成功率が9割を超えた
結果から言う。ほぼ失敗しなくなった。
突っ込んで挟んで引けば、墨袋と内臓がそのまま出てくる。体感では9割以上。墨だけ取れて内臓を後から取り出す、という事はあるが、何も取れなかった…という記憶はない。あれだけ苦労したのは何だったのか、という感じだ。
腕は何も変わっていない。道具を替えただけだ。釣ったイカは刺身にも沖漬けにもするが、墨袋がきれいに抜けているだけで、家に帰ってからの作業がまるで違う。
▼自分が使っているのはこれ。全長233mm、ステンレス製
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違いその1、挟む部分の厚み
2本を並べて、どこが違うのか見てみた。

一番はっきりしていたのは、挟む部分の厚みだった。がまかつは分厚く、墨取物語は薄い。しかも墨取物語は、先端にかけてさらに薄くなっていく。
分厚いと、挟んだ力がその分だけ広い面に散る。墨袋を破るには強すぎて、掴んで留めるには甘い。滑るのも破れるのも、ここが効いているのではないかと思う。薄い方は、挟んだ力がそのまま集中する。
違いその2、どこで挟んでも同じように掴める
ギザギザの粗さ自体は、見た限りどちらも変わらない。閉じたときの見た目もほとんど同じだ。

そこでA4用紙を挟んで試してみた。すると差が出た。墨取物語はどこで挟んでもムラなく掴める。がまかつは、掴む場所によっては若干掴みにくい箇所があった。
精度の差、というほど大げさなものではないのかもしれない。ただ、滑るか滑らないかの境目では、この程度の差が出るのだろう。
違いその3、支点の構造と指のかけ方

組み方そのものが違う。がまかつは普通のハサミと同じような組み方だが、墨取物語は変わった構造をしている。

うまくピントが合わなかったが、左ががまかつ、右が墨取物語だ。支点まわりの作りが違うのが分かると思う。
ただ、支点の位置となると話は逆になる。変わっているのは、むしろがまかつの方だ。
他のフォーセップもいくつも見比べてみたが、がまかつほど支点が手前にあるものは無かった。支点が手前ということは、挟む側の腕がその分だけ長いということになる。テコで言えば、力が伝わりにくくなる側だろう。
理屈は詳しくない。ただ握った感触として、墨取物語の方が明らかに軽い力で掴める。
墨取物語はストッパー、つまりロックが無いタイプでもある。挟んだまま固定しない。掴んで即引き抜く動作なら、むしろロックは要らないということなのだろう。
それと、指のかけ方が違う。人差し指用と小指用、二つの指掛けが付いているおかげで、5本すべての指でフォーセップを握り込める。穴に指を二本通して支えるのとは、安定感がまるで違う。疲れにくいのも、たぶんここだ。
ついでに言うと、素手でやっているのが良くない
ここまで道具の差を書いておいて何だが、自分は素手で墨抜きをしている。これは良くない。
墨のある方を上に向けて持つのだが、手が濡れていると普通に滑る。おまけに、まだ元気なイカだと吸盤が手に吸い付いてくる。
「うわ!きも!」
反射的にブンブン払ってしまう。これでは掴めるものも掴めない。
ちなみにイカを釣ってスッテを持って反対向けて生簀に入れる時も、たまに吸盤が手に引っ付く事もあるが、それも嫌いで出来るだけ引っ付かないよう急いでいる。中々カンナからイカが外れない時はハラハラする。
「はよ外れてくれちや!」
思えば、がまかつも墨取物語も、どちらも手袋をした状態で使うことを前提に作られている。がまかつは「グローブ着用時も使用可能な大きめハンドル」、墨取物語は「手袋の上からでもしっかり握れる大型フィンガーホール」。両方ともわざわざそう書いてある。
つまり手袋をするのが本来の使い方だ。次からはそうしようと思う。
後から見たら、評価は星2.6だった
買った後になって、Amazonのレビューを見てみた。がまかつのLE135は9件で星2.6。星1が3割、星2が2割で、半分以上が低い評価だった。
書かれている内容も、滑る、潰れる。自分がずっと言っていたことと、だいたい同じだった。
下手なのは自分だと思って我慢していたが、そう思っていたのは自分だけではなかったらしい。
ただ、これも安い買い物ではない
ここまで褒めておいて何だが、墨取物語も決してリーズナブルではない。4,290円は、墨抜きの道具としては高い部類だ。
1,000円や2,000円のフォーセップも山ほど売られている。その中にもいい物はあるはずで、安いから駄目だとは思わない。ただ、自分が実際に使って結果が変わったのはこれだった。だからこれを勧める。
ちなみに自分は、Amazonではなくメルカリで手に入れた。釣り道具を売った残高が、ちょうど残っていたからだ。
面倒なときは店舗の釣具屋に買い取ってもらうが、少しでも高く売りたいときは、ネットで売る方が断然高くなる。
調べてみると、墨取物語にはAmazonのレビューも付いていない。ググって出てくるのも販売サイトの説明ばかりで、実際に使った人の声がほとんど見当たらなかった。売れていないのか、単に値段で敬遠されているのか、そこは分からん。
道具を疑うのは、悪いことじゃない
上手くならないとき、まず自分を疑うのは正しい。実際、やり方は合っていた。それでも結果は出なかった。
2,000円の道具に2年付き合って、4,290円に替えたら解決した。だったら、もっと早く疑ってよかった。
今のところ、墨取物語で失敗した記憶がない。

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